当院では金属アレルギーの診査を行っております。パッチテストを導入し、歯科治療における金属素材がお身体にとって適切な治療がどうかを見極めます。当院ではコバルト・ニッケル・クロム・パラジウム・亜鉛・銅・水銀など、歯科治療に使用される主な金属17種類のパッチテストを行います。
パッチテスト「パッチプロテクト」について
当院では「パッチプロテクト」を導入し、金属アレルギーを診断しております。皮膚アレルギーパッチテストテープを保護する耐水性の保護シートです。
伸縮性の高い薄いシートを患者さんの皮膚上に貼りつけ、数日間お過ごしいただき、後日パッチの色の変化を見て診査いたします。パッチテスト期間中はシャワーなどの水滴もテープが守りますので、日常生活は快適にお過ごし頂けます。
*女性の患者様へのパッチシート貼り付けは女性スタッフが行わせていただきます。
金属アレルギーによる扁平苔癬
これは扁平苔癬で切開がかなり大きくなることが予想されます。
最近では金扁平苔鮮は金属アレルギー疾患と位置付けられており、同様の症状が発症した場合は、パッチテストなどの金属アレルギー検査が必須とされております。
画像のように歯科用金属が装着されて、当該部位に接触しやすい頬粘膜に発生します。扁平苔鮮は以前は癌化率の低い前癌状態に分類されていましたが、2017年改定のWHO頭頸部腫瘍分類により前癌状態と前癌病変(前癌状態に比べ癌化しやすい、口腔粘膜疾患では白板症・紅板症などの病変)、が統合されて『口腔潜在的悪性疾患』に改称されました。
現在『口腔潜在的悪性疾患』に分類されているのは、白板症・紅板症・口腔粘膜下線維症・先天性角化異常症・無煙タバコ角化症・逆喫煙による口蓋角化症・慢性カンジダ症・扁平苔鮮・円板状ループスエリテマトーデス・梅毒性舌炎・口唇の光線性角化症の12種類が含まれております。
頬粘膜の縫縮となり開口障害が生じる
▲わかりやすいイラスト口腔外科手術
朝波惣一郎、植木輝一、田辺晴康、扇内秀樹 クインテッセンス出版より抜粋
扁平苔鮮は病理組織診断を行うため切除して検体としますが、画像のように切開予定線で切除して縫合してしまうと頬粘膜の縫縮(頬粘膜を縫うことにより縮めてしまう)となり開口障害(口が3cm以下しか開かない)が生じてしまいます。
これは一般的に顎関節が外れやすい方に行う手術法と同様の方法になってしまいます。健常者で顎関節に異常がないにも関わらず、開口障害に陥ると食事摂取に問題が生じます。
テルダーミス
この様な場合に適した材料がテルダーミスです。正式名称は真皮欠損様グラフトで、構造は右図の様になっていて下層面を創面に貼り付けて縫い付けていきます。
下層がドレーン孔のついたコラーゲンでできていて、原理としてはこのコラーゲンにドレーンを通して、欠損した部分の母床から細胞が侵入して、下層のコラーゲン部分が真皮様組織(肉芽組織)に置き換わってくれます。
扁平苔癬を切除し、欠損した部分を縫縮せずにテルダーミスを置いて縫い付けた状態です。この状態で1~2週間置くとテルダーミスの下に新たな粘膜ができ、縫縮および開口障害を避けることができます。
摘出物です。扁平苔癬だと位置関係をわかるようにしておかないと境界部分の確認が必要になることがあるので位置関係をわかるようにして切除して病理検査依頼を書きます。
当院では全ての病理組織診断は(一社)日本病理学会認定の口腔病理専門医が行います。
金属アレルギーでの主な症状
お口の中の「扁平苔癬-へんぺいたいせん」
歯科治療における金属アレルギーで良く見られる症状が扁平苔癬(へんぺいたいせん)です。白斑というレース状の白い炎症が頬の肉や歯ぐきに出る症状です。触れると痛んだり、食べ物がしみたりします。放っておくと癌化する可能性もあります。
当院ではベルスコープを導入し、この扁平苔癬についても詳しく検査させていただいております。
関連治療⇒口腔ガン検診のページへ
皮膚の炎症
手足の水ぶくれや痒み、体調が優れない、…などの症状が出ることが報告されております。他にもアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脱毛症なども例があります。
金属アレルギーが心配される主な歯科治療ケース
アマルガム(昔の歯科治療金属)
アマルガムは水銀を含んだ保険適用の金属で、1970年代を中心に積極的に歯科医院で使用されていた奥歯の詰め物です。現代ではほとんどの歯科医院がこのアマルガムを使用しなくなりましたが、その時期に奥歯の詰め物を行った方は、もしかしたらアマルガムインレーが入っているかもしれません。
アマルガムの含まれる水銀による金属アレルギーは、一番心配される金属素材です。アマルガムの特長として、見た目がザラザラしている(粗造である)、黒い金属である(お口の中で黒く変色)ことが挙げられます。歯科医師が見ればすぐにアマルガムかどうかの判断が出来ますので、水銀が心配な方は一度ご相談ください。
金属の詰め物・メタルインレー
一般的に奥歯の詰め物に使われる金属の保険適用素材として、パラジウムによるインレーがありますが、このパラジウムインレー、いわゆる銀歯は金属アレルギーが心配されます。
金合金のインレー、いわゆるゴールドインレーだと金属アレルギーのリスクは軽減されますが、まれに金のアレルギーを持つ方もいらっしゃいますので注意が必要です。
金属の被せ物・クラウン
パラジウムを使用した奥歯の銀歯クラウンや金属のキャップにプラスチックやセラミックを焼き付けたクラウンにも注意が必要です。
金属アレルギーのリスクや、歯ぐきに金属の黒ずみが付着するメタルタトゥーの心配もありますので、当院では100%セラミックのクラウンの再治療をおすすめしております。
上記クラウンの金属土台(メタルコア)
神経の治療を行った後は、歯の被せ物の土台に、パラジウムやゴールドの金属土台、いわゆるメタルコアやゴールドコアを使用することがあります。これらの金属がアレルギーを引き起こすこともあります。
一度立てた金属コアは除去を行おうとすると歯根の破損が高リスクで起きてしまうため、金属アレルギーが心配な方は初期の治療でなるべく金属を使わないファイバーコアの土台を選択することが望ましいです。
チタンインプラント
チタン金属は、生体親和性の高い金属として医科における人工関節や歯科インプラント体に積極的に利用されています。しかしチタンインプラントによる治療でも金属アレルギーが出ることがあります。その原因として、
- チタンインプラントではあるが、純チタンではない(100%チタンでない)
- 純チタンではあるが、製造工程でパラジウムが付着している
・・・という事が挙げられます。特に後者は、ほとんどのメーカーで、インプラントの製造工程でパラジウム製の金型を使います。そのため純チタン製のインプラントでもパラジウム成分が付着し、金属アレルギーが出てしまう例が報告されています。
金属アレルギーの原因がチタンインプラントの場合、当院ではケースにもよりますが、金属を使わないジルコニアインプラントの「Zシステム」をおすすめしております。
入れ歯の留め金(金属のバネ)
歯科治療に金属を使う方法として、特に多く使う治療法が部分入れ歯です。保険診療に使う部分入れ歯は、土台となる歯に金属の引っかけるバネを使うことが多く、この留め金が金属アレルギーの原因となることがあります。
解消法として、当院ではノンクラスプデンチャーやコンフォートなど、金属を使わない入れ歯も取り扱っていますので、一度ご相談ください。
金属除去時にはラバーダムを使用します
ただでさえ、歯に金属が付いて溶解しているのに、金属粉が口の中に入ってしまったらどうなるんですか? …このようなご質問もよくお受けいたします。
実際に銀歯・金歯などの除去時には金属の切削粉が飛んでしまいます。そのため当院では必ずラバーダムをつけて、お口の中に金属の切削粉が入らないように金属を除去します。
かつ口腔外バキュームも使用し、空気中に飛散する粉塵や水しぶきもなるべくお身体に入らないような工夫をしております。
患者さまのお身体を考慮するのはもちろんのこと、術者側の安全面にもメリットがある工夫と言えます。
金属アレルギー外来を設置した理由
過去の研究・治療経験がキッカケでした
15年前に金属アレルギーの学会発表を行った経験があり(その時は亜鉛に関する論文発表でした)、それ以来、歯科治療で金属素材を使用する事に常に関心を憶えていました。
また、過去に金属アレルギーで、お口の中に扁平苔癬が出来た患者さんがいらっしゃり、チタンのインプラントを埋入し、上物の被せ物もオールセラミックに変えました。ところが、頬肉の炎症は消えたのですが、インプラント周辺の歯ぐきの炎症は、すぐに再発してしまったのです。
過去の研究や治療経験が元になり、金属アレルギーの治療に深くかかわるようになりました。歯科治療における金属アレルギーが心配な方は、ぜひ当院までお問い合わせ・ご相談いただければと思います。